バイオシミラーの開発では、その薬剤自体の先行バイオ医薬品との類似性の高さを示すために、広範な品質特性解析を実施します。
ベバシズマブBS「ファイザー」は、下表に示す評価項目により、先行バイオ医薬品との品質特性における同等性/同質性を評価しました。
実施された品質特性解析のうち、主要なデータをご紹介します。
物理化学的性質 | |||
糖鎖プロファイル | |||
生物活性 | |||
バイオシミラーの開発では、その薬剤自体の先行バイオ医薬品との類似性の高さを示すために、広範な品質特性解析を実施します。
ベバシズマブBS「ファイザー」は、下表に示す評価項目により、先行バイオ医薬品との品質特性における同等性/同質性を評価しました。
実施された品質特性解析のうち、主要なデータをご紹介します。
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糖鎖プロファイル | ||
生物活性 | ||
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糖鎖プロファイル | |||
生物活性 | |||
原理が異なる複数の試験方法を適用し、本剤のアミノ酸配列が先行バイオ医薬品(EU)#と同一であること、また一次構造および翻訳後修飾が先行バイオ医薬品(EU)#と類似していることが示されました。
● 一次構造および翻訳後修飾の解析に用いた方法および結果の概要
本剤と先行バイオ医薬品(EU)#のペプチドマップのプロファイル(ピークの溶出位置、ピーク形状および相対ピーク強度)は、一致しました。また、検出された全てのペプチドの質量は理論値によく一致しました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のペプチドマップ
方法:LC/MS−ペプチドマッピング法で本剤と先行バイオ医薬品(EU)#の一次構造および翻訳後修飾の詳細な分析を行った。
還元アルキル化した試料をLys-C*1で消化し、得られたペプチドを液体クロマトグラフィーUV検出214nmで分析し、質量分析法により各ペプチドの分子量を測定した。
*1:リシルエンドペプチダーゼ(Lys-C)
原理が異なる複数の試験方法を適用し、ジスルフィド結合の存在と架橋位置およびジスルフィド結合の状態について、本剤と先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されました。
● ジスルフィド結合の解析に用いた方法および結果の概要
*1:リシルエンドペプチダーゼ(Lys-C)
原理が異なる複数の方法で分析して得られた総合的な試験結果より、高次構造について本剤と先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されました。
● 高次構造の解析に用いた方法および結果の概要
本剤と先行バイオ医薬品(EU)#で波長約217nmに負のピークが、約202nmに正のピークがみられ、試料の二次構造は、主にIgG1抗体にみられるβ-シート構造を有することが示されました。波長195~250nmの範囲でスペクトルがよく一致していたことから、二次構造について本剤と先行バイオ医薬品(EU)#の類似性が示されました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のFar-UV CDスペクトル
方法:CDスペクトルは、タンパク質構造の不斉性(3次元の物質が、その鏡像と重ね合わせることができない性質)に由来する左右円偏光の吸収の差を測定する。CD分光計を用いて、遠紫外領域(測定波長195〜250nm:主にポリペプチド中のアミド結合に由来するシグナルがみられる)におけるCDスペクトルを測定し、タンパク質の二次構造を分析した。
本剤と先行バイオ医薬品(EU)#で認められた緩やかな正のバンドや負の交互のピークおよびトラフは、折り畳まれたタンパク質内の複数のアミノ酸残基やジスルフィド結合が組み合わさっている特徴を示しており、三次構造の指標となります。250~350nmの範囲の全波長においてスペクトルはよく一致していたことから、三次構造について本剤および先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のNear-UV CDスペクトル
方法:CD分光計を用いて、近紫外領域[測定波長250〜350nm:主に2種のアミノ酸(トリプトファンおよびチロシン)とジスルフィド結合による光の吸収がみられる]のCDスペクトルを測定し、タンパク質の三次構造を分析した。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#において複数の特徴的なピークが認められ、いずれのピーク頂点も同じ温度付近に確認されました。DSCまた、DSC曲線は25~95°Cの温度範囲全域で互いによく一致し、高次構造について本剤および先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のDSC曲線(示差走査熱量測定法)
方法:示差走査熱量測定法(DSC)を用いて高次構造の熱安定性を解析した。温度を変動させたときのタンパク質溶液の比熱容量(Cp)の変化を測定し、折り畳み構造がほどける転移中点温度(Tm)および転移に要する熱量を基に、高次構造を評価した。
原理が異なる複数の方法で分析して得られた総合的な試験結果より、電荷不均一性を評価しました。電荷分子種の種類および酸性分子種含量については本剤と先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されましたが、塩基性分子種含量については差が認められました。
塩基性分子種含量の差異は、重鎖のC末端にリシン残基を有する分子種の割合が本剤で高いことによるものです。この重鎖C末端の不均一性による塩基性分子種含量の差異はモノクローナル抗体でよくみられる特徴であり、電荷不均一性に現れます。C末端リシンを含む分子種は安全性および免疫原性に影響せず1,2)、標的抗原との結合および体内動態に影響を及ぼさないことが報告されています3)。
1) Antes, B. et al.:J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 852(1-2):250, 2007[L20180913001]
2) Cai, B. et al.:Biotechnol Bioeng 108(2):404, 2011[L20180913002]
3) Schiestl, M. et al.:Nat Biotechnol 29(4):310, 2011[L20180510008]
● 電荷不均一性の解析に用いた方法および結果の概要
原理が異なる複数の方法で分析して得られた総合的な試験結果より、純度について、本剤と先行バイオ医薬品(EU)#との類似性が示されました。
● 純度の解析に用いた方法および結果の概要
原理が異なる複数の方法で分析して得られた総合的な試験結果より、主要なN-結合型糖鎖については本剤と先行バイオ医薬品(EU)#の類似性が示されましたが、わずかな差が認められた糖鎖種もありました。高マンノース型糖鎖に認められた存在量の差異では、薬物動態に対する影響は少ないこと4)、抗体の糖鎖は抗体の体内からの排出に大きな影響を及ぼさないことが知られており5)、また、存在量にわずかな差が認められた末端ガラクトシル化糖鎖およびアフコシル化糖鎖は抗体のエフェクター機能に関与することが知られていますが、ベバシズマブはADCC活性およびCDC活性を示さないことから、有効性および安全性に影響を及ぼすものではないと考えられます。
4) Goetze, A.M. et al.:Glycobiology:21(7):949, 2011[L20181221030]
5) Chen, X., Liu, Y.D., Flynn, G.C.:Glycobiology:19(3):240, 2009[L20181218011]
● N-結合型糖鎖の解析に用いた方法および結果の概要
本剤と先行バイオ医薬品(EU)#のN-結合型糖鎖プロファイルを評価した結果、主要な糖鎖種[G0、G0F、G1F(a+b)、G2F]において同等/同質でした。一方、Man5においてより詳細な解析を行った結果、二剤間にわずかな差異が認められましたが、この差異は有効性および安全性に影響を及ぼすものではないと判断されました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#の代表的なN-結合型糖鎖マップ
方法:酵素的な切断後に、蛍光標識されたN-結合型糖鎖につき蛍光光度計を用いた親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で分析し、LC/MSによってN-結合型糖鎖の量を評価した。シアル酸においても同様に評価した。
● Fab領域の生物活性の解析に用いた方法および結果の概要
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#と標準物質を比較した濃度反応曲線において、いずれも濃度依存的に細胞増殖を抑制することが示されました。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#の細胞増殖抑制活性(濃度反応曲線)
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#、標準物質の細胞増殖抑制活性を測定しました。標準物質の活性に対する各試料の相対活性(%)を比較した結果、相対活性の値の分布[本剤群80〜109%、先行バイオ医薬品(EU)#群87〜127%]は重なっており、平均値は本剤群97%、先行バイオ医薬品(EU)#群102%でした。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#の細胞増殖抑制活性(相対活性)
方法:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用い、本剤、先行バイオ医薬品(EU)#、標準物質をそれぞれ加えた後、VEGF溶液を加え培養後、生物発光強度を測定した。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のヒトVEGF165に対する結合活性(濃度反応曲線)
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#、標準物質のヒトVEGF165に対する結合活性を測定しました。標準物質の活性に対する各試料の相対活性(%)を比較した結果、相対活性の値の分布[本剤群90〜115%、先行バイオ医薬品(EU)#群89〜114%]は重なっており、平均値は本剤群101%、先行バイオ医薬品(EU)#群101%でした。
● 本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のヒトVEGF165に対する結合活性(相対活性)
方法:酵素免疫測定(ELISA)法を用いて、本剤、先行バイオ医薬品(EU)#、標準物質それぞれのヒトVEGF165に対する結合活性を評価した。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のいずれもADCC活性が認められませんでした。
方法:エフェクター細胞として末梢血単核細胞(PBMC)、ターゲット細胞としてVEGF発現ヒト結腸腺癌細胞株DLD-1を用いて本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のADCC活性を評価した。陽性対照としてHER2発現ヒト乳癌細胞株SKBR3を用いて抗HER2モノクローナル抗体(トラスツズマブ)のADCC活性を評価した。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のFcγRⅢa158V(158番目のアミノ酸がバリンのホモ接合型)およびFcγRⅢa158F(158番目のアミノ酸がフェニルアラニンのホモ接合型)に対する結合活性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価しました。本剤のSPRセンサーグラム、速度パラメータ[結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)]、解離定数(KD)は先行バイオ医薬品(EU)#と類似しており、本剤のKD値に対する先行バイオ医薬品(EU)#のKD値の相対値(% KD値)はFcγRⅢa158Vで100%でした。FcγRⅢa158Fでは、83%でありましたが、本剤および先行バイオ医薬品(EU)#はADCC活性を持たないことから、このわずかな差は生物活性に影響を及ぼさないと考えられます。
また、その他のFcγ(FcγRI、FcγRⅡa131H、FcγRⅡa131R、FcγRⅡb、FcγRⅢb)に対する結合活性をSPR法により評価した結果、本剤と先行バイオ医薬品(EU)#の類似性が示されました。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のいずれもCDC活性が認められませんでした。
方法:ターゲット細胞としてVEGF発現ヒト結腸腺癌細胞株DLD-1およびヒト補体を用いて本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のCDC活性を評価した。陽性対照としてCD20発現Ramosヒトリンパ腫細胞株を用いて抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)のCDC活性を評価した。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のC1qに対する結合活性をメソスケールディスカバリー社による測定法(MSD法)により評価した結果、本剤を100%とした場合、本剤に対する先行バイオ医薬品(EU)#の相対結合活性率は101%であったことより、本剤と先行バイオ医薬品(EU)#の類似性が示されました。
本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のFcRnに対する結合親和性を評価した結果、SPRセンサーグラムは類似していた。本剤および先行バイオ医薬品(EU)#の解離定数(KD値)の相対値(%KD値*)は、それぞれ82~118%(n=13)、97~117%(n=11)であり、本剤に先行バイオ医薬品(EU)#の%KD値の下限値を下回るロットが認められました。FcRnに対する結合親和性はモノクローナル抗体のin vivo での血中半減期に影響すると考えられているが、%KD値が82%のロットを用いてPKパラメータを比較した結果、対照薬剤に対する試験薬剤のCmax、AUClastおよびAUCinfの幾何平均値の比(%)の90%信頼区間は、いずれも事前に規定した許容範囲内(80~125%)でした。
方法:表面プラズモン共鳴(SPR)法により、本剤および先行バイオ医薬品(EU)#のFcRnに対する結合親和性を評価した。FcRnから得られた値はSPRの通常の操作範囲外であることが確認されたことから、FcRnに対する本剤および先行バイオ医薬品(EU)#の結合は定常状態解析を用いて評価した。
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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