Ⅲ.各抗菌薬における推奨(システマティック・レビュー&メタ解析、臨床研究)/4. ボリコナゾール
Executive summary
a. TDMの目的は治療効果を上げ、副作用を予防することだが、CYP2C19の遺伝子多型によるpoor metabolizer(PM)が比較的高率な日本人においては、主に副作用予防からTDMを推奨する(Ⅰ)。非アジア人では、低濃度の傾向がありむしろ治療効果を上げるためTDMを行う(Ⅱ)。
b. 治療前より慢性肝機能障害を有する症例(Child-PughクラスA, B)では減量投与が行われるため、TDMでの濃度確認が必要である(Ⅱ)。
c. 重症の侵襲性カンジダ症や侵襲性肺アスペルギルス症など重症真菌感染症治療を行う場合、治療失敗のリスクを減らす目的でTDMを行う(Ⅱ)。
d. 肝機能障害発生時(Ⅰ)や臨床反応が認められない場合(Ⅱ)はTDMを実施し用量調節を行う。
e. 視覚症状は血中濃度上昇と関連性が報告されている。ただし自然に改善することも多く、症状が持続する場合にTDMを考慮する(Ⅲ-A)。
f. 初回TDMに基づき、投与量を変更した場合、VRCZは非線形の薬物動態(PK)(投与量と血中濃度は比例関係にない)を示すため、TDMによる血中濃度の確認が必要となる(Ⅱ)。
g. 生物学的利用度は高いが、注射薬から同量で経口step downした場合は濃度が低下するため、改めてTDMによる調整が必要である(Ⅱ)。
h. 外来治療においても長期使用例ではTDMを考慮する(Ⅲ-A)。
i. 深在性真菌症の予防としてVRCZ投与を受けた移植レシピエントではTDMを実施する(Ⅱ)。
j. VRCZと薬物相互作用を有する薬物の併用または中止時にTDMを実施する(Ⅲ-A)。
k. 小児では一般に年齢によるクリアランスの差が大きく、TDMによる評価が必要である(Ⅱ)。
抗菌薬TDMガイドライン作成委員会 編:抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022 VRCZ executive summary 更新版 1 日本化学療法学会:1, 2022
▶ CQ1. ボリコナゾール(VRCZ)使用症例においてTDMの適応は?
▶ CQ2. TDMにおいて測定が推奨されるパラメータは何か?
▶ CQ3. 推奨されるTDMの時期は?
▶ CQ4. 成人で推奨されるTDMの目標値は?
▶ CQ5. 成人で推奨される投与設計は?
▶ CQ6. VRCZ治療患者に対するTDMを用いたantifungal stewardshipは有用か?
▶ CQ7. 小児におけるTDMのタイミング、目標濃度、投与設計は?
▶ CQ8. 特殊病態(腎機能低下時、肝機能低下時、妊産婦・授乳婦)におけるVRCZの適切な使用量とTDMは?
▶ CQ9. VRCZにおける薬物間相互作用は?
▶ CQ10. VRCZにおける血中濃度測定法は?
▶ 推奨の定義(区分/等級)
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