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Patients Story Book
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VYNDAQEL (tafamidis) 61 mg is indicated for the treatment of wild-type or hereditary transthyretin amyloidosis in adult patients with cardiomyopathy (ATTR-CM). VYNDAQEL (tafamidis meglumine) 20 mg is indicated for the treatment of transthyretin amyloidosis in adult patients with stage 1 symptomatic polyneuropathy (ATTR-PN) to delay peripheral neurologic impairment. [INDICATION TO BE UPDATED BY LOCAL MARKET.]
健診がきっかけで診断に至ったATTR-CMの症例
診断フローとポイント
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
年齢、性、身長、 体重 |
80歳、男性、身長165cm、体重58kg |
---|---|
主訴 | 息切れ(2016年10月)、胸痛(2017年10月) |
現在の症状 | 易疲労感 |
既往歴/合併症 | なし |
初診から診断まで にかかった期間 | 息切れで受診した前々医(A病院)初診から約3年、胸痛で受診した前医(B病院)初診から約2年、当院紹介受診から約1ヵ月 |
家族歴 | 特になし |
浜松医科大学医学部 附属病院の受診目的 |
心疾患の精査目的 |
主訴に対する他院 での 治療歴 |
息切れに対する処方としてはA病院でカリウム(K)チャネル開口薬(ニコランジル)、胸痛に対する処方としてはB病院で硝酸薬(ニトログリセリン) |
症例経過図
A病院循環器科(地域総合病院)
B病院循環器科(地域総合病院)
お話を伺った診察・検査担当医師
浜松医科大学医学部附属病院 循環器内科 特任講師
大谷 速人 先生
※監修者のご所属・肩書は取材当時のものです。
繰り返す房室ブロックから心アミロイドーシスの精査に至る
2016年4月に受けた健診で、心電図異常(Ⅰ度房室ブロック)を指摘されたDさん。約半年後に息切れを感じ、A病院循環器科(地域総合病院)を受診しました。この時点では、心アミロイドーシスが疑われる既往歴や合併症および家族歴はありませんでした。同年12月、心エコー図検査で中隔有意な心肥大が認められました。また、このとき撮影したGLSを見返すと、apical sparing patternも認められます。狭心症の疑いで翌2017年1月に心臓CT検査を行ったところ、冠動脈狭窄などの異常所見は見られず、冠攣縮性狭心症の疑いで、Kチャネル開口薬(ニコランジル)が処方されました。
その後、Dさんは胸痛を主訴に同年10月にB病院循環器科(地域総合病院)の救急外来を受診しました。CAGで有意な狭窄は認められず、冠攣縮狭心症の疑いで硝酸薬(ニトログリセリン)が処方されました。その後、胸痛以外の自覚症状は落ち着いていたようですが、2019年に健診でⅡ度房室ブロックを指摘され、B病院を再受診しました。その際に心アミロイドーシスの知識を持つ医師がいたため、これまでの治療があまり奏効していない点を考慮し心臓MRI検査、核医学検査を実施。これらの検査所見から、心アミロイドーシスを含めた心疾患精査のため当院を紹介されました。
前医で実施した心臓MRI検査、
核医学検査で心アミロイドーシスの疑いが強まる
身体所見(①)の評価はA病院で行いました。その後、B病院では心臓MRI検査(②)、核医学検査(③)を実施し、その結果から心アミロイドーシスの疑いが強まりました。DさんはⅠ度あるいはⅡ度の房室ブロックを繰り返しており、B病院からは当院紹介時に「心アミロイドーシスによる心電図異常ではないか」という指摘もありました。当院では、血液検査(③)、心電図検査(④)、心エコー図検査(⑤)、生検および病理検査(⑥)、遺伝子検査(⑦)を行いました。なお、A病院、B病院でも心電図検査、心エコー図検査を行っています。
①身体所見:目立った所見なし
A病院受診時には、特に目立った身体所見はありませんでした。
②心臓MRI検査:典型的な心アミロイドーシス所見である全周性の心内膜遅延造影
心臓MRIは当院の紹介元であるB病院で行われました。全周性に心内膜遅延造影が見られ、心アミロイドーシスを強く疑う典型的な所見といえます(図1)。
図1. B病院で実施された心臓MRI検査所見:全周性の心内膜遅延造影が見られる
(提供:B病院)
③核医学検査:心筋全体にGrade 3の99mTcピロリン酸の集積を認める
心臓MRI検査の結果を受け、核医学検査として99mTcピロリン酸シンチグラフィ検査もB病院で実施しました。その結果、心筋全体に高度の99mTcピロリン酸の集積を認め、『2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン』で定めるGrade 3と判定されました(図2)。
図2. 99mTcピロリン酸シンチグラフィ検査所見:心筋全体に高度の99mTcピロリン酸の集積を認める
(提供:B病院)
④血液検査:NT-proBNPとトロポニンTが異常高値
心アミロイドーシスを含めた心疾患の精査のため、DさんはB病院から当院に紹介されました。当院での血液検査の結果は、N端末プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が3,194pg/mL、トロポニンTが0.041ng/mLといずれも高値を示しており、心筋が障害を受け、心不全を来している状態を反映しています。しかし他の心疾患でもこれらの指標は高値になるので、血液検査だけで心アミロイドーシスを強く疑うことは難しいでしょう。
⑤心電図検査:Ⅰ度房室ブロック、CRBBB、左脚後枝ブロックを認める
心電図検査はA病院、B病院でも行っていますが、完全右脚ブロック(CRBBB)と左脚後枝ブロックは当院で発見されました。その際にⅠ度房室ブロックも認めました。Dさんは房室ブロックを繰り返していましたが、R波の増高不良や低電位といった心アミロイドーシスを疑わせる所見は認められませんでした。
⑥心エコー図検査:肥大型心筋症に潜む心アミロイドーシスの可能性にも留意
心エコー図検査についてはA病院、B病院で行っていますが、当院でも実施しました。心室中隔厚/心室後壁厚(IVS/PW)が19/17.4mmと、全周性に肥厚が認められました。また、当院では全例でGLSを撮影しており、Dさんはapical sparing patternが見られました。これらは、心アミロイドーシスを疑うべき所見です(図3)。
なお、DさんはA病院の心エコー図検査で非対称性の心肥大が見られました。心アミロイドーシスでは、必ずしも非対称性の心肥大が早期、全周性の心肥大は進行期とはいえませんが、これに当てはまるケースもあります。また、非対称性の心肥大により肥大型心筋症(HCM)と診断された患者さんの中には、心アミロイドーシスが潜んでいる可能性が十分にあると考えられます。
図3. 心エコー図:心肥大(上)およびapical sparing patternを認める(下)
(提供:浜松医科大学医学部附属病院 循環器内科 特任講師 大谷 速人 先生)
⑦生検/病理検査:ATTR-CMと確定診断
当院で右室心内膜心筋生検と腹壁脂肪生検を行い、病理検査をしました。通常、腹壁脂肪生検は外来で実施しますが、Dさんは心疾患精査の目的で心臓カテーテル検査を受ける必要があったため、その際に入院下で行いました。いずれもコンゴーレッド染色陽性を示し、免疫染色ではトランスサイレチン(TTR)陽性と判定、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)と確定診断しました。
アミロイドーシス全般において、複数部位からアミロイドが検出される場合は病勢が進行していると考えられます。そのため、当院では疾患の進行度を確認するという意図で、アミロイドーシスの生検については、通常心筋生検と腹壁脂肪生検の2種類を行っています。侵襲性を考慮した上で、胃粘膜生検の追加も検討しています。
⑧遺伝子検査:野生型ATTR-CMと確定
当院でTTR遺伝子変異解析を行ったところ、遺伝子変異は確認されず、最終的に野生型ATTR-CMと確定しました。
ビンダケル®投与と近医でのフォロー
確定診断後に実施した治療:特定疾患の指定を受け、ビンダケル®投与を開始
確定診断後、特定医療費支給認定の申請が受理され2020年6月にビンダケル®の投与を開始しました。
今後の治療方針:ビンダケル®継続投与およびフォローは近医で
Dさんは当院のかなり遠方にお住まいです。そのため、確定診断後は何度か当院を受診していただき、以降はビンダケル®の継続投与を近医にお任せする方針としています。頻回の通院が困難なほど遠方であるため、基本的に当院での定期的なフォローアップも行いませんが、心不全症状が現われた際などは、近医から当院に連絡をもらうようにしています。
心電図と心エコー図など複数の検査を組み合わせる
Dさんは他院初診時に手根管症候群などATTR-CMでしばしば見られる症状がなく、当院における心電図検査でも伝導障害(CRBBBと左脚後枝ブロック)が認められたものの、典型的な心アミロイドーシス所見であるR波増高不良や低電位はありませんでした。その一方で、心エコー図検査では心アミロイドーシスを疑わせる重度の左室肥大とapical sparing patternが確認されました。また、狭心症の治療がなかなか奏効しないという経過もたどっていました。このように、複数の検査や経過を組み合わせることで、心アミロイドーシスの診断に結び付く点を銘記すべきと考えます。
近医には心不全の症状が見られた場合に報告してもらう
ATTR-CMでは、高齢で遠方の患者さんが少なくありません。通院が困難な場合、当院では定期的なフォローアップは行いません。ビンダケル®の継続処方をお願いする近医に、心不全の症状が見られた場合は当院に連絡していただくようにしています。近医では、フォローアップの検査として胸部X線検査と心電図検査を実施してもらっています。
認定施設への受診を勧める際は、患者さんの心理面に十分に配慮を
心肥大の背景には高血圧やHCMがあるケースが多いのですが、左室肥大を認めた場合、R波増高不良や伝導障害の有無といった心電図検査の所見などと組み合わせて心アミロイドーシスを疑うことが重要でしょう。
なお、診断を進めるに当たっては99mTcピロリン酸シンチグラフィ検査が有用ですが、この検査は施設によって撮像法や評価法が異なるという問題があります。そのため、心アミロイドーシスを疑った場合は可能な限り早期に日本循環器学会認定施設に紹介し、精査を行うことが重要です。
また、ATTR-CMは進行すると予後が悪く、患者さんの心理的負担も大きい疾患です。認定施設への受診を勧める際には、患者さんの心理面に十分に配慮した上で、早期受診の重要性や予後不良の疾患である点を正確に伝え、認定施設を確実に受診していただくことが不可欠と考えられます。
トランスサイレチン型心アミロイドーシスが疑われたら、認定施設までご相談ください。
臨床徴候や検査所見などからトランスサイレチン型心アミロイドーシスが疑われる、あるいはトランスサイレチン型心アミロイドーシスの可能性が否定できない場合は、生検および染色などの専門的な診断が必要となります。日本循環器学会の認定施設への紹介をご検討ください。
ビンダケル®の効能又は効果
4.効能又は効果
ビンマック®の効能又は効果
4.効能又は効果
トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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