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監修:木下 浩二 先生(近畿大学病院 血液・膠原病内科 教授)
関節リウマチ治療において、メトトレキサート(MTX:リウマトレックス)は各種ガイドラインでアンカードラッグとして推奨され第一選択薬として位置づけられています。一方で死亡例を含む重篤な副作用が報告されており、適正使用や副作用マネジメントに気を配る薬剤でもあります。
ここでは、リウマトレックスで注意すべき副作用の1つである、腎障害について、日ごろ実践している、気をつけている事項についてご紹介してまいります。
注)リウマトレックスは腎障害患者への投与は禁忌であり、リウマトレックスの投与開始前と投与中は腎機能検査を行うことが必要です。
▼ 関節リウマチにおける腎障害とは
▼ リウマトレックス電子添文上の腎関連の記載
▼ MTX診療ガイドライン2016における腎関連の禁忌と慎重投与の記載
▼ 高齢者に対する注意
▼ 腎障害患者さんがリウマトレックス服用時に発現する副作用とは
▼ 腎機能低下例への投与
▼ 腎障害への対策
▼ 患者さんへの説明
関節リウマチ患者さんにおける腎障害としては、メサンギウム増殖性腎炎やアミロイドーシスのような関節リウマチ自体によって生じるものと、MTXを含むDMARDsやNSAIDsのような治療薬によって生じるもの、関節リウマチに合併した膠原病によるものなどがあります。
腎機能低下が疑われる症状としては、
があります。このような症状がみられた時にはすぐに腎機能検査を行います。
腎障害の基準として、日本腎臓学会の「CKD診療ガイド」1)では、以下のように記載されています。
① 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
② GFR<60mL/分/1.73m²
①、② のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する。
1)日本腎臓学会 編 : CKD診療ガイド2012 東京医学社, 2012
https://jsn.or.jp/guideline/pdf/CKDguide2012.pdf
リウマトレックス電子添文の警告、禁忌、重要な基本的注意として次のような記載があります。
【リウマトレックス電子添文における警告】
1.6 腎機能が低下している場合には副作用が強くあらわれることがあるため、本剤投与開始前及び投与中は腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察すること。
【リウマトレックス電子添文における禁忌】
2.5 腎障害のある患者
禁忌について強調したいことは、透析患者さんも投与禁忌に該当する、ということです。
【リウマトレックス電子添文における重要な基本的注意】
8.3 骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、本剤投与開始前及び投与中、4週間ごとに臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、尿検査等)を行うなど、患者の状態を十分観察すること。
リウマトレックスの電子添文はこちらから
【MTX診療ガイドライン2016における投与禁忌】
6. 高度な腎障害を有する患者
【MTX診療ガイドライン2016における慎重投与】
腎糸球体濾過量(GFR)<60mL/分/1.73m³に相当する腎機能を有する場合
※透析患者やGFR<30mL/分/1.73m³に相当する腎機能は投与禁忌
高齢者では加齢に伴う生理機能の低下から腎機能が低下していることが多く、発熱・脱水などにより突発的な腎機能障害を生じることがしばしば認められます。そのため高齢者の診察の際には特に腎機能検査値(血清クレアチニン値、eGFR、シスタチンCなど)に注意するようにしています。
【リウマトレックス電子添文における特定の背景を有する患者に関する注意】
9.8 高齢者
腎障害はMTXによる血液障害の最大のリスク因子であり、腎機能低下で最も気をつけなければいけないのは、MTX排泄遅延による汎血球減少などの血液障害の発現といえるでしょう。
血液障害による死亡例も報告されており、腎機能低下もしくは、腎機能低下に伴う血液障害が疑われた際には、速やかにMTXの投与を中止し、専門医に紹介する必要があります。
また、血液障害が発現した場合、血球減少のため感染症を併発する恐れもあるので、感染症についても考慮する必要があります。
投与する前には、日本リウマチ学会「関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2016年改訂版」に記載された項目を参考にスクリーニング検査を実施することが必要です。
血液検査による腎機能を評価する検査も含まれており、禁忌症例への投与を避け、慎重投与の症例には、低用量から開始するなどして、副作用発現に十分注意し、様子をみながら用量調節するようにします。
投与中においても同様に血液検査により腎機能を評価し、腎機能を含むモニタリングを定期的に行います。
腎機能障害など副作用の危険因子がある場合は、通常よりも短い間隔(2~4週間ごと)でモニタリングするようにしています。
血液障害については、血液検査で白血球、ヘモグロビン、血小板などを確認しますが、MTXの中止となる重症例の指標としては、ヘモグロビン<8g/dL(特に大球性パターンを示す場合)、白血球<1,500/mm³、血小板<50,000/mm³とし、同時にロイコボリンレスキューの実施を考慮します。
なお、ロイコボリンレスキューを要するような重症例でなくても、骨髄抑制発現時にはMTXは中止します。
【リウマトレックス電子添文における重要な基本的注意】
8.3 骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、本剤投与開始前及び投与中、4週間ごとに臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、尿検査等)を行うなど、患者の状態を十分観察すること。
eGFR<60mL/分/1.73m²の患者には、ガイドラインにもあるように、MTXの投与は慎重を要します。
30≦eGFR<60mL/分/1.73m²の場合も慎重を要しますが、投与する場合は、葉酸を併用しながら低用量より開始し、モニタリングにて、症状、末梢血検査などを注意深く観察します*。
高齢者に投与する場合も、低用量から投与を開始し、慎重な経過観察を行うとともに、高用量投与は避けて下さい。副作用リスクの高い患者に投与する場合は、葉酸製剤の併用(5mg/週以下)が推奨されます。
葉酸の用法・用量は「MTX診療ガイドライン」を参考に行います。
腎機能低下がはっきりした場合は、MTXは減量・休薬する必要があります。また、同様に、NSAIDsを減量、休薬します。MTXを休薬する場合は、他のDMARDsや生物学的製剤の投与も検討しなければなりませんが、リスクとベネフィットのバランスを考慮する必要があります。
また、ペニシリンやプロペネシドはMTX排泄遅延をひき起こす可能性があることも、忘れてはなりません。
10. 相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)
薬剤名:ペニシリン(ピペラシリン等)、プロベネシド
臨床症状・措置方法:メトトレキサートの副作用(骨髄抑制、肝・腎・消化管障害、血液障害等)が増強されることがある。頻回に臨床検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、メトトレキサートの減量、休薬等適切な処置を行うこと。また、メトトレキサートの拮抗剤であるホリナートカルシウム(ロイコボリンカルシウム)を投与すること。
機序・危険因子:併用薬剤がメトトレキサートの腎排泄を競合的に阻害するためと考えられている。
腎障害の観点から患者さんには下記のような問いかけをしています。
尿の量や回数が急に減ったということはありませんか?体のむくみはありませんか?
熱中症や風邪などによる下痢、嘔吐、食欲不振などはありませんでしたか。
MTXと飲み合わせの悪い薬がありますので、関節リウマチ以外で他の病院やクリニックを受診する際には、MTXを服用していることを必ず医師や薬剤師に伝えてください。
日本リウマチ学会や、治療薬の各製薬会社から、患者さん向けの小冊子なども出されていますので、適宜利用しています。
関節リウマチ患者さんを診察するうえで、腎障害の兆候を見逃さないことが重要です。患者さん一人一人に異なる対応が求められます。投与の可否、葉酸の処方、臨床症状の観察など、様々な角度から考慮と検討を続けていくことが望まれます。
参考:
日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会 編
関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版 羊土社, 2016
詳細はリウマトレックス適正使用情報Vol.28をご参照ください
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