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肝障害編 肝障害編 肺障害編 Loading 腎障害編 Loading LPD編 LoadingExpertが語るメトトレキサートの副作用マネジメント(肺障害編)

監修:川人 豊 先生(京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫内科学 病院教授)

関節リウマチ治療において、メトトレキサート(MTX:リウマトレックス)は各種ガイドラインでアンカードラッグとして推奨され第一選択薬として位置づけられています。一方で死亡例を含む重篤な副作用が報告されており、適正使用や副作用マネジメントに気を配る薬剤でもあります。
ここでは、リウマトレックスで注意すべき副作用の1つである、肺障害について、日ごろ実践している、気をつけている事項についてご紹介してまいります。

注)リウマトレックスの投与前にはスクリーニング検査を実施することが重要です。

リウマトレックス服用時で注意すべき肺障害とは
リウマトレックスによる間質性肺炎
リウマトレックスによる呼吸器感染症
副作用対策の実際
患者さんへの説明

リウマトレックス服用時で注意すべき肺障害とは

関節リウマチ患者にみられる肺障害は多岐にわたりますが、①感染症、②関節リウマチに合併する肺障害、③薬剤性肺障害、が主要なものであり、いずれも患者の予後に大きな影響を及ぼします。このうち、リウマトレックス(MTX)服用による肺障害は、②薬剤性肺障害となります。

リウマトレックスによる間質性肺炎

MTXによる間質性肺炎は、一般的に用量依存性でないMTXの副作用として知られ、葉酸投与でも予防できず、発現を予測することが難しいといわれています1)。通常、急性もしくは亜急性でMTX使用6か月~1年以内に発症することが多いが、長期使用でも出現することがあるため、注意が必要です2,3)
 

1) 日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会 編 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版 羊土社, 2016
2) Kiely, P. et al.: BMJ Open. 9(5): e028466, 2019
3) Fragoulis, GE. et al.: 1(58):1900, 2019

リウマトレックスによる呼吸器感染症

MTX投与中は、免疫が低下している状態のため、感染症の発現リスクが高まります。また前述のとおり、関節リウマチでは間質性肺炎などの肺障害を合併していることが多く、感染症を起こしやすいため、注意が必要です。

とくに、呼吸器に関する感染症としては、

  • 細菌性肺炎
  • ニューモシスティス肺炎

に注意が必要です。

また、頻度は高くありませんが肺結核、サイトメガロウイルス感染、非定型抗酸菌肺炎などにも注意が必要です。

リウマトレックスの最新の適正使用情報Vol.28によると、リウマトレックスの製造販売承認日(1999年3月12日)から2021年12月31日までに、国内における本剤との因果関係が否定できない死亡症例851症例のうち、感染症が死亡の主な原因と考えられた症例は163例(19.2%)であり、そのうち肺炎43例、ニューモシスティス肺炎(45例)などの呼吸器感染症が上位を占めていました。
肺障害関連はリウマトレックスを服用している患者さんにとって、常に発生に気をつけておかなければならない疾患の1つであり、医療者側としても、最も注意すべき項目の1つであり、日ごろから呼吸器疾患専門医との連携に心がけています。

 

リウマトレックス適正使用情報Vol.28(2022年7月作成)

詳細はリウマトレックス適正使用情報Vol.28をご参照ください

リウマトレックスの電子添文はこちらから

副作用対策の実際危険因子

肺障害(感染性、または間質性)の危険因子としては、既存のリウマチ性肺障害、高齢、糖尿病、低アルブミン血症、過去のDMARDsの使用歴などが挙げられますが、危険因子のまったくない症例に発症することも少なくないため、定期通院時などのたびに注意するようにしています。また、感染症に関しては、上記に加え、ステロイドの使用や最近の感染症既往歴なども注意が必要です。

スクリーニング

開始前のスクリーニングを重視することが一番です。MTX診療ガイドライン2016年版では、血液検査や尿検査に加え、肺疾患関連検査として、X線検査、SpO2、胸郭HRCT、KL-6/SP-D、β-D-グルカン、抗MAC-GPL IgA抗体測定を考慮することが示されています。

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.7 胸水、腹水等のある患者[胸水、腹水等に長期間貯留して毒性が増強されることがある。]
2.8 活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある。]

8. 重要な基本的注意
〈効能共通〉
8.4 本剤投与開始前に胸部X線等の検査で肺疾患の有無を確認し、さらに必要に応じて胸部CT検査等を行い、投与の可否を慎重に判断すること。
8.5 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として本剤の開始前に適切な抗結核薬を投与すること。
・胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
・結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
・インターフェロン-γ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
・結核患者との濃厚接触歴を有する患者
また、本剤投与中も、胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること。なお、結核の活動性が確認された場合は本剤を投与しないこと。

リウマトレックス電子添文第2版(2022年10月改訂)

発生時の対応

まずは、リウマトレックス投与を中止し、胸部X線検査、胸部CT検査、血液ガス検査等を実施します。また、並行して呼吸器専門医にコンタクトをとります。
画像診断で異常陰影が認められた場合には、肺障害、感染症、あるいは両疾患の合併の可能性を考え、培養検査、血液検査で血清β‐Dグルカン値、KL‐6値等を確認、薬剤性肺障害と感染症等との鑑別診断を行います。

薬剤性肺障害の場合:
ステロイド療法等の実施と、感染症の場合では抗菌薬の投与を行います。
ただし、間質性肺炎にステロイドを投与した場合は、新たな感染症の発症にも注意する必要があります。

ニューモシスティス肺炎の場合:
急速に病状が進行するおそれがあるので、疑わしい場合には、確定診断よりも治療を優先することを考慮することも必要になります。

患者さんへの説明

間質性肺炎や呼吸器感染症に関して、日常診療では、患者さんに対して下記のような問いかけをしています。

間質性肺炎

突然、痰の絡まない咳、息切れ、呼吸が苦しい、発熱などが突然起きたときにはリウマトレックスを服用するのをやめて、すぐに診察を受けてください。リウマトレックスによる薬剤性肺炎の疑いがあります。

呼吸器感染症

リウマトレックスを服用すると、免疫が落ちて感染症にかかりやすくなります。のどの痛みや頭痛や微熱、咳や痰などが起きたときは、風邪と決めつけずにリウマトレックスの服用をやめて診察を受けてください。

ワクチン接種の勧め

関節リウマチの患者さんで一番多い感染症は肺炎で、高齢になるほどかかりやすくなるため、肺炎球菌ワクチンや、インフルエンザワクチンの接種をお願いします。

日本リウマチ学会や、治療薬の各製薬会社から、患者さん向けの小冊子なども出されていますので、適宜利用しています。

資材一覧Loading

1. 警告
1.1 本剤の投与において、感染症、肺障害、血液障害等の重篤な副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と適応疾患の治療経験をもつ医師が使用すること。
1.2 間質性肺炎、肺線維症等の肺障害が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、原則として、呼吸器に精通した医師と連携して使用すること。
1.4 本剤の投与に際しては、副作用の発現の可能性について患者に十分理解させ、下記の症状が認められた場合には直ちに連絡するよう注意を与えること。
発熱、咳嗽・呼吸困難等の呼吸器症状、口内炎、倦怠感

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

9.1.1 間質性肺炎、肺線維症等の肺障害又はその既往歴のある患者
症状が再燃又は増悪するおそれがある。[8.4、11.1.7参照]

9.1.2 感染症を合併している患者
感染症が増悪するおそれがある。[11.1.3参照]

9.1.3 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部X線検査上結核治癒所見のある患者)
胸部X線検査等を定期的に行うなど、結核症状の発現に十分注意すること。結核を活動化させるおそれがある。[8.5参照]

リウマトレックス電子添文第2版(2022年10月改訂)

まとめ

MTX服用中の肺障害については、関節リウマチ治療においては切っても切り離せない問題です。各種のガイドラインの記載を基本とし、日ごろの診療では、検査結果とともに、患者さんのちょっとした変化を見落とさないように気をつけています。

参考:
リウマトレックス適正使用情報 Vol.28(2022年7月作成)
日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会 編
関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版 羊土社, 2016
リウマトレックス適正使用ガイド(2022年9月改訂)

詳細はリウマトレックス適正使用情報Vol.28をご参照ください

2023年4月作成 XEL37N001A
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