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健康維持に必要な栄養素を含む野菜は、潰瘍性大腸炎(UC)患者さんにもぜひ摂ってもらいたい食品です。ところが、体調を崩すことを恐れるあまり、食物繊維を含む野菜を食べるのをためらう患者さんが少なくありません。いったいどうしたら、患者さんにも野菜を摂ってもらえるのでしょうか。UC患者でもある管理栄養士の小林美貴さんに、賢い野菜の摂り方について伺いました。
中学2年生だった1997年にUCを発症し、その1年半後に大腸を全摘。当時の治療で厳しい食事制限を課せられたことがきっかけの一つとなり、管理栄養士に。福祉施設に勤務した後、自治体の介護予防教室や食生活改善事業などに携わり、地域のクリニックで生活習慣病をはじめとする患者さんの栄養相談なども行っている。
中学2年生だった1997年にUCを発症し、その1年半後に大腸を全摘。当時の治療で厳しい食事制限を課せられたことがきっかけの一つとなり、管理栄養士に。福祉施設に勤務した後、自治体の介護予防教室や食生活改善事業などに携わり、地域のクリニックで生活習慣病をはじめとする患者さんの栄養相談なども行っている。
患者さんはなぜ野菜を摂ることをためらうのでしょうか。野菜を摂ることに対する患者さんが感じている不安について伺いました。
野菜を食べると排便のリズムが崩れる、お腹が張る、下痢になるといった患者さんの声をよく聞きます。そのため野菜は体調がよいときに限って食べる、家にいるときだけ食べるなど、条件付きで摂っている方が多いようです。
また、患者さんによっては、ごぼうは絶対に食べない、とうもろこしやきのこはそのまま出てくるので食べない、トマトの皮や種、スプラウトは食べないなど、食べない野菜を決めている方も多くいます。さつまいもや枝豆は食べ過ぎるとお腹が張るので少量にしているなど、野菜の種類によって食べる量を制限している場合もあります。
患者さんからの相談で多いのは、食物繊維についてです。患者さんは摂ってもよい食物繊維と摂るのは避けるべき食物繊維があることは知っていますが、具体的にどんな野菜に含まれている食物繊維は大丈夫なのかわからないという方が多いですね。そのため、全体的に野菜を避けてしまいがちです。
そんなとき、私は寛解期と再燃期に分けて、摂ってもよい水溶性食物繊維を含む野菜と、避けるべき不溶性食物繊維を含む野菜をイラストにしたものを使って説明しています。
また、再燃期については、生野菜は避け、にんじんやかぶをやわらかく煮たものをすすめたり、胃腸に負担をかけないために白菜の葉先だけを使う、なすは皮をきれいにむいてやわらかく煮るなど、食べられる野菜の部位を具体的に示して、なるべく多くの種類の野菜を食べられるようにアドバイスしています。
UC患者さんが野菜を摂るにはどのような注意と工夫が必要でしょうか。寛解期と再燃期に分けて教えていただきました。
症状が落ち着いているときは、調理法を工夫すれば基本的に何でも食べられます。不溶性食物繊維が多いれんこんでも、すりおろしてれんこんまんじゅうにするなどの工夫で胃腸に負担をかけません。切り干し大根もやわらかく煮てから細かく刻めば食べられます。カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンB1、葉酸、食物繊維を含む切り干し大根は、ぜひ食べていただきたい食材のひとつです。
野菜の繊維は量を少なめにする、やわらかく煮る、小さく切る、プロセッサーやミキサーで細かくする、裏ごしするなどの調理の工夫で体への負担を軽くすることができます。再燃期はどうしても淡色系の野菜が多くなりますので、寛解期にはブロッコリーや青菜などの色の濃い野菜にチャレンジしていただきたいですね。青菜も葉先だけではなく、やわらかく火を通して茎の部分もぜひ食べてほしいです。
症状が落ち着いているときは、油も摂りすぎなければ使えますから、炒め物など調理法が広がるので、いろいろなメニューを試していただけます。自分の体調を見て、食べる量や調理法を工夫しているうちに、自分に合った野菜の摂り方がわかってくるのではないでしょうか。
再燃期でも野菜は食べられますが、油をあまり使わず、繊維を断ち切る、皮はしっかりむくなど調理法に注意しましょう。かぶは繊維が多いですが、皮を厚めにむいて煮るとやわらかくなるので、再燃期でも食べられます。ニラはそのまま便に出てくるという人もいますが、その場合は食べないほうが無難です。調理法としては蒸し料理がおすすめです。余分な脂質を落とせますし、やわらかく仕上がります。蒸し器を使わなくても、シューマイは電子レンジでできますし、カット野菜にお肉をのせて加熱するだけでもいいでしょう。
ご家族がいらっしゃるUC患者さんの場合、患者さんだけ違うメニューにするのは料理する人も大変ですし、患者さん自身も寂しさを感じることもあるでしょう。使う食材は基本的に家族と同じものにして、調理法や味つけで調整すればいいと思います。
同じ食材でも家族の分は唐揚げ、患者さんの分は煮る、焼くなどです。また、おすすめしたいのが離乳食のように取り分けメニューにすることです。ある程度火を通したあとに、患者さん分を取り分け、さらに時間をかけて加熱してやわらかくしたり、家族分は、味つけを少し濃いめにするなどで対応するといいですよ。
野菜は栄養バランスを整えるためにも大切な食品です。でもとくに野菜を摂って不調になった経験がある患者さんは野菜を摂ることに消極的です。そんな患者さんに、どんなアドバイスをしてあげたらいいのでしょうか。
野菜には、皮膚や粘膜の健康を維持して免疫力を維持したり、身体の機能を調節する働きをするビタミンやミネラルが含まれています。また、たんぱく質はビタミンCと一緒に摂ることで効率的に体に吸収されます。患者さんには、ぜひ野菜を摂る大切さについて話してあげてください。
再燃期には不溶性食物繊維を多く含む野菜などは避けたほうがよいですが、寛解期には野菜を小さめに切るなど調理の工夫をすれば安心して食べられる野菜がたくさんあることを伝えてほしいです。
ひとり暮らしなどで、自分ではあまり料理をしないという患者さんには、外食や中食でメニューを選ぶ力を育てることが大切だと思います。体調がよければ、たまに洋食や中華を食べても問題ないと思いますが、基本的には脂質が少なめの和食を選び、自分に合った野菜を使ったメニューを選ぶようにしてもらうといいでしょう。
最近ではコンビニでも体に優しいとうたった惣菜が豊富です。UC患者さんが食べられそうな商品をチェックしておき、教えてあげると喜ばれると思います。
監修:国崎 玲子 先生
横浜市立大学 附属市民総合医療センター
炎症性腸疾患(IBD)センター 准教授
潰瘍性大腸炎の患者さんのための野菜を賢く摂るレシピを冊子にて紹介しております。管理栄養士監修の元、野菜を賢く摂るための調理のポイントについてのアドバイスも掲載しております。
今回の冊子は全体的に市販のカット野菜や冷凍野菜を使うなど手軽に作れそうなメニューが多いので、ひとり暮らしの方や料理を普段しない方にもおすすめしやすいと思います。
上手に市販品を活用することで料理へのハードルが下がるといいと思うので、具体的に「このメニューはカット野菜を使えばできるから作ってみたらいいよ」など冊子を見ながら説明していただけたらいいと思います。
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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