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小児神経因性膀胱で行われる治療である保存的治療、薬物治療、手術治療についてそれぞれご紹介し、特に保存的治療の1つである清潔間欠導尿(CIC)について詳しく解説します。
▼ 小児神経因性膀胱の特徴
▼ 二分脊椎とは
▼ 二分脊椎に伴う泌尿器科領域の病態(合併症)
肥満予防を目的とした体重コントロール、運動の推奨、水分摂取指導などがあげられます。いずれも排尿・排便と深くかかわる日常生活上の注意点として、まず初めに指導すべきです。
井川靖彦:“Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:259, 2021
膀胱訓練や神経変調療法の小児神経因性膀胱に対する効果は一般に乏しいです。二分脊椎症例において、排便障害に対する逆行性洗腸療法は、便失禁を改善し、尿路感染リスクの低減にも寄与することが報告されています。
井川靖彦:“Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:259, 2021
清潔間欠導尿(clean intermittent catheterization:CIC)とは、一定時間ごとに尿道から膀胱にカテーテルを入れて、膀胱尿を排出する方法です。
CICは以下のような目的で行われます。
膀胱に大量の尿がたまり膀胱壁が過進展すると、膀胱壁内の血流が低下し、感染に対する防御力が低下します
尿がたまったら尿を排出し、常に膀胱壁の過伸展を防ぎます
田中純子, 萩原綾子編著:すぐにわかる!使える!自己導尿指導BOOK 2 メディカ出版:20, 2012
CICの適応を考える際には、排尿障害を起こす原疾患や、水腎症や腎機能低下などの上部尿路評価のほか、上肢の機能障害や下肢の開脚制限などの身体機能を評価します。さらに、患者周囲の環境として、家族のサポート体制、トイレ環境や職場、学校などの社会的側面を総合的に評価することが重要です。
実際のCICは以下のような手順で行われます。
女性の場合
1 | 必要な物品を準備します。 カテーテル、潤滑剤、洗浄綿、ウエットティッシュ、ビニール袋、パットかおむつ |
2 | 流水と石鹸で手指を十分に洗います。 ※外出先で手洗いができない場合はウエットティッシュ、洗浄綿などで良く拭いてください。 |
3 | 洗浄綿の袋を広げ、使用しやすいように2枚に分けておきます。 |
4 | カテーテルの袋を開け、潤滑剤をカテーテルの先端につけます。 |
5 | 衣服を脱ぎ、パッドを敷きます。 |
6 | ウエットティッシュで手を消毒します。 |
7 | 陰唇を広げて消毒します。①中心部、②右、③左と上から下に向かって、洗浄綿の位置を変えながら拭きます。陰唇を広げた手は、カテーテルを挿入し、尿が出るまで離さないようにします。 |
8 | 利き手でカテーテルを持ち、尿道口にカテーテルをゆっくり挿入し、尿が出ていることを確認します。尿が出たら1cmほどカテーテルを挿入します。 |
9 | 尿が出なくなったら、カテーテルをゆっくり引き抜いていきます。 途中で尿が出る場合は、カテーテルを止めておきます。 |
10 | 洗浄綿で陰部を拭きます。 |
11 | おむつの中に、カテーテルを使用したごみを丸め、ビニール袋に入れ、袋を閉じてごみ箱に捨てます(各市町村の廃棄方法に従って捨てます)。 |
12 | 衣類を整えます。 |
13 | 最後に手を洗います。 |
男性の場合
1 | 必要な物品を準備します。 カテーテル、潤滑剤、洗浄綿、ウエットティッシュ、ビニール袋、パットかおむつ |
2 | 流水と石鹸で手指を十分に洗います。 ※外出先で手洗いができない場合はウエットティッシュ、洗浄綿などで良く拭いてください。 |
3 | 洗浄綿の袋を広げ、使用しやすいように2枚に分けておきます。 |
4 | カテーテルの袋を開け、潤滑剤をカテーテルの先端につけます。 |
5 | 衣服を脱ぎ、パッドを敷きます。 |
6 | ウエットティッシュで手を消毒します。 |
7 | 陰茎の先端を包む皮を引っ張って先端を露出させ、消毒します。円を描くように中心部から周りに向かって洗浄綿で拭きます。先端を露出させたまま、カテーテルを挿入しやすいように、陰茎をお腹に近づけるように持ち上げます。 |
8 | 陰茎の先を掴んで尿道を開き、尿道口にカテーテルをゆっくり挿入し、尿が出ていることを確認します。尿が出たら1cmほどカテーテルを挿入します。 |
9 | 尿が出なくなったら、カテーテルをゆっくり引き抜いていきます。 途中で尿が出る場合は、カテーテルを止めておきます。 |
10 | 洗浄綿で陰部を拭きます。 |
11 | おむつの中に、カテーテルを使用したごみを丸め、ビニール袋に入れ、袋を閉じてごみ箱に捨てます(各市町村の廃棄方法に従って捨てます)。 |
12 | 衣類を整えます。 |
13 | 最後に手を洗います。 |
監修:山梨大学大学院 総合研究部 泌尿器科学講座 教授 三井貴彦 先生
長期間の膀胱カテーテル留置による尿路管理は、カテーテルの屈曲・閉塞などのため、症候性尿路性器感染に反復するリスクが高いので、基本的に回避すべきです。高度の尿排出障害があるが、CICによる尿路管理は困難で、ほかに代替の手段がない場合に最終手段としてやむをえず選択する尿路管理法です。合併症として、カテーテル関連尿路感染症に加えて、膀胱結石、膀胱癌にも注意が必要です。恥骨上膀胱瘻カテーテル留置は、尿道カテーテル留置と比較して、尿道損傷や前立腺炎、精巣上体炎などの合併症を低減できる利点があるため、長期のカテーテル留置が必要な場合の選択肢として考慮すべきです。
井川靖彦:“Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:260, 2021
CICを行っている患児が、夜間多尿のために夜間睡眠時に膀胱過伸展となっている場合に、夜間のみカテーテル留置することで、上部尿路障害の回避などに有用です。また、仕事、外出、旅行、スポーツなどで導尿が困難な場合も、生活の質を向上させる目的で使用することは有効です。ただし、長時間にわたり安易に尿道カテーテル留置を行うことは、尿路性器合併症の頻度を増加させることにつながる可能性が危惧されてり、留置時間については十分な注意を払う必要があり、CICの代替となる尿路管理法ではないことを含めた適切な患者教育が必須です。
井川靖彦:“Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:260, 2021
排尿筋過活動または低コンプライアンス膀胱に対して、膀胱内を低圧に保ち、VURや上部尿路拡張の軽減、腎機能障害の発生の軽減、また、導尿間隔の延長、尿禁制の改善を目的に投与します。この目的のため、通常はCICに併用する形での投与が推奨されます。
β3アドレナリン受容体作動薬は、神経因性排尿筋過活動または低コンプライアンス膀胱に対しては、その効果を示唆する少数例の報告があるのみで、現時点で実臨床での使用は推奨できません。さらに、ミラベグロンの添付文書には「生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること」という警告が記されています。
膀胱出口部(膀胱頸部、前立腺部尿道)の抵抗を低下させる作用を記載して使用されます。無作為対照比較試験(RCT)では明確な有効性が示されていないものの、オープン試験では排尿筋括約筋協調不全(DSD)や括約筋弛緩不全を有する自排尿例に対して有効性を示す報告があります。
排尿筋収縮力を増強させる作用を期待して使用されますが、RCTが存在せず重篤な副作用も懸念されます。DSDなどの尿路閉塞がある患者には禁忌です。
経尿道的ボツリヌス毒素膀胱内注入療法の有効性および安全性についてはエビデンスが蓄積され、抗コリン薬およびCICを併用した保存的治療に抵抗性の神経因性排尿筋過活動に対して有効な治療法です。成人(15歳以上)の難治性神経因性排尿筋過活動による尿失禁に対して、2020年4月から保険適用になりました。
井川靖彦:”Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:260-261, 2021
本邦における承認外の情報を含みます。詳細については各薬剤の電子化された添付文書または電子添文をご確認ください。
薬物療法を含む保存的治療が功を奏さない高度の膀胱糞尿障害(排尿筋過活動または低コンプライアンス膀胱)が適応となります。遊離した回腸やS状結腸の腸管片を腸管膜付着部の反対側に切開して(腸管腔化と呼ぶ)1枚の板状にし、切開した膀胱を被せるように縫合して膀胱容量の拡大を図る手術法です。
尿道括約筋閉鎖不全による糞尿機能障害に対して選択されます。筋膜を使用した尿道吊り上げ術、尿道延長術、人口括約筋埋め込み術などがあります。
井川靖彦:”Ⅲ 小児泌尿器科学各論 H 小児の下部尿路機能障害など 2 小児の神経因性下部尿路機能障害” 小児泌尿器科学 日本小児泌尿器科学会編集 診断と治療社:260, 2021
01 疾患を理解する
02 可能性を疑う
03 診断を行う
04 治療をする
05 疾患紹介動画
小児神経因性膀胱と二分脊椎
小児神経因性膀胱の診療の流れ
小児神経因性膀胱の早期診断・治療の重要性
難治性の下部尿路症状から疑う
検査所見から疑う
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Copyright© since 2010 Pfizer Japan Inc. All right reserved.
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