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ステロイド薬使用時、特に中用量~高用量を長期間にわたって使用した際には、一般細菌から抗酸菌、真菌、ウイルスに至るまで様々な病原微生物に対して易感染性となる可能性がありますが、特に重要なのは細胞性免疫不全に伴って生じる感染症です。
ステロイド薬投与による易感染性は、用量及び累積使用量に依存します。漫然とした使用を避けると共に、必要に応じて、日和見感染症に対するモニタリングや予防投与を考慮する必要があります。
藤井 毅:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 1.易感染性・感染症とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:160, 2015
ステロイド薬使用により起こる副作用として骨粗鬆症が知られており、早期から予防と治療を考慮する必要があります。
ステロイド性骨粗鬆症の発症機序は図1のように、ステロイドの直接作用による骨形成の低下と骨吸収の増加に加え、ステロイドによる負のカルシウムバランス、性ホルモン減少などの二次性の要素が考えられています。
大島 久二ほか:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 2.骨粗鬆症とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:168, 2015
ステロイド性骨粗鬆症の予防と治療には、図2に示した「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版」(日本骨代謝学会編)に沿った対応が重要になってきます。
大島 久二ほか:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 2.骨粗鬆症とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:168, 2015
日本骨代謝学会編:ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版
和文概略版(2014年5月作成):5, 2014
ステロイド薬は、糖代謝に対してさまざまな影響を及ぼします(図3)。肝臓における糖新生の亢進を介してブドウ糖の放出を促進し、筋肉や脂肪組織へのブドウ糖の取り込みを低下させます(インスリン抵抗性)。また、インスリン分泌抑制作用も報告されています。ステロイドの催糖尿病作用は主にインスリン抵抗性の増強により説明されます。
一般的なステロイド糖尿病の特徴として、空腹時血糖の上昇は軽度かむしろ低めで食後血糖が高値となり、また、ステロイド薬は朝に多く投与する場合が多いため、午前中よりも午後~就寝前にかけて血糖の上昇を示す傾向があります。
したがって、スクリーニング検査は、空腹時ではなく食後(できれば午後)血糖の測定が望ましいでしょう。
笠山 宗正:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 3.糖代謝異常・糖尿病, 肥満とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:173, 2015
ステロイド薬は、肝臓及び脂肪組織に直接作用して、脂肪分解を促進し、脂質のミトコンドリア利用を亢進させてエネルギーを得ますが(異化作用)、慢性過剰状態ではインスリン抵抗性を誘導し、高インスリン状態において脂肪合成を促進します(同化作用)。また、ステロイド薬は、食欲を亢進させ、間接的に脂質摂取量が増加します。これらの作用(図4)の総和として、血中脂質濃度の上昇、さらに中心性肥満が生じます。
ステロイド療法による脂質代謝異常は、一般的には用量・期間依存性に発生頻度や重篤度が高くなります。血中脂質濃度は経口プレドニゾロン投与48時間後には上昇を示し、2~3ヵ月後には満月様顔貌(ムーンフェイス)や野牛肩などの中心性肥満が観察されます。
対策としては、原疾患の治療状況や合併症等を踏まえて、一般的な脂質異常症における食事療法や運動療法、あるいは薬物療法を症例ごとに考慮していく必要があります。
小林 弘:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 4.脂質代謝異常とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:178, 2015
小林 弘:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 4.脂質代謝異常とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:178, 2015より作成
ステロイド薬投与による精神症状(ステロイド精神病)には多彩な症状がみられますが、多弁・多動、多幸などを示す躁状態やうつ状態、躁うつ混合状態などの気分障害症状が最も多くを占めています。
多くはステロイド薬投与開始後3~11日で症状が出現します。
精神症状については、ステロイド薬以外の要因についても考慮に入れた上で、関与が疑われる要因に応じて同時に、あるいは優先順位をつけて治療を検討すべきでしょう。
治療は第一にステロイド薬の減量または中止になりますが、UCの治療のために中止が困難である場合には、対症療法として向精神薬が使用されることもあります。
飯田 諭宜ほか:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 5.精神症状とその対策~ステロイド精神病の考え方と対応~”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:184, 2015
ステロイド薬は、薬理量において消化管粘膜のシクロオキシゲナーゼ(COX)-2を阻害し、粘膜防御に関与しているプロスタグランジン(PG)産生を低下させます。結果として消化性潰瘍などの消化管障害が起こることがあります。
ステロイドの内服薬を使用中に、心窩部痛(特に食後や空腹時)、腹膜刺激症状、黒色便を認めた場合は、速やかに消化性潰瘍を鑑別する必要があります。
内視鏡検査で活動性の出血や露出血管を認める場合は、内視鏡あるいは手術による止血の適応となります。非出血性の消化性潰瘍の場合は、場合によっては絶食とした上で、プロトンポンプ阻害薬の投与を開始します。
上原 昌晃:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 7.消化管・肝障害とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:189, 2015
脂肪性肝疾患(脂肪肝)とは、肝細胞に中性脂肪が沈着して肝障害をきたす疾患の総称です。ウイルス性、自己免疫性などの肝疾患も有さず、明らかな飲酒歴がないものは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とよばれます。原因として肥満、糖尿病、脂質異常症等の代謝疾患の他にステロイド等の薬剤性によるものが知られています。
NAFLDは、病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(NAFL)と進行性の経過を示す非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とに大別されます。NASHは肝硬変への進展、及び肝細胞がんへのリスクがあることからその予防の重要性が指摘されています。
ステロイド薬投与中に肥満、2型糖尿病、脂質異常症の発症や増悪が認められ肝機能障害も伴う場合は、NAFLとNASHを積極的に鑑別します。ただし、血液生化学検査と画像検査では鑑別は困難であり、NASHの確定診断は、肝生検で肝細胞の大滴性脂肪化、炎症を伴う風船様腫大、繊維化等を認めることによります。
上原 昌晃:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 7.消化管・肝障害とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:189, 2015
ステロイド薬投与による婦人科的な副作用として重要なのは月経異常です。続発性無月経のうち薬剤性無月経は4.7%で、その60%がステロイド薬との報告もあります。生殖可能年齢の女性にステロイド薬を投与すると視床下部-下垂体系にて、下垂体ゴナドトロピンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の分泌が抑制され、無月経や月経不順に至ります。ステロイドを減量していくことで月経異常は改善していきます。
三上 幹男:“Ⅲ ステロイドの副作用トラブルシューティング
~メカニズムから対処法まで~ 13.婦人科的副作用とその対策”
一冊できわめるステロイド診療ガイド (第1版)田中 廣壽ほか編 文光堂:216, 2015
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