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投与前の確認事項
監修:東京大学 名誉教授 山本 一彦 先生
東邦大学医療センター佐倉病院 特任教授 鈴木 康夫 先生
投与前の確認事項
ゼルヤンツの投与にあたっては、投与対象となる患者を適切に選択いただき、問診・検査により感染症(結核等)や合併症の有無、臨床検査値等をご確認いただく必要があります。
1.警告
<効能共通>
1.1
本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等や、悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。[2.2、2.3、8.1-8.5、8.8、9.1.1-9.1.3、9.1.9、9.8、11.1.1、11.1.8、15.1.1、17.3.1参照]
1.2 感染症
1.2.1 重篤な感染症
敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。[2.2、8.1、8.5、8.8、9.1.1、9.1.3、9.8、11.1.1、15.1.1参照]
1.2.2 結核
播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、脳髄膜、胸膜、リンパ節等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤の投与開始前に適切な抗結核薬を投与すること。
ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている。[2.3、8.1、8.3、8.8、9.1.1-9.1.3、11.1.1参照]
〈関節リウマチ〉
1.3 本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること。
〈潰瘍性大腸炎〉
1.4 本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の既存治療薬(ステロイド、免疫抑制剤又は生物製剤)の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と潰瘍性大腸炎治療の経験をもつ医師が使用すること。
禁忌 | 解説 | |||
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1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 | 過敏症状が出現する可能性があるため、本剤を投与しないでください。 | |||
2. 重篤な感染症(敗血症等)の患者 | 本剤は免疫応答を減弱する作用を有し、正常な免疫応答に影響を与える可能性があります。重篤な感染症(敗血症等)の患者に本剤を投与することにより症状を悪化させるおそれがあるため、本剤を投与しないでください。 | |||
3. 活動性結核の患者 | 本剤の投与により、播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、脳髄膜、胸膜、リンパ節等)を含む結核が報告されています。本剤の投与により活動性結核の症状を悪化させるおそれがあるため、本剤投与に先立って、結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認してください。活動性結核と診断された場合には本剤を投与しないでください。 | |||
4. 重度の肝機能障害を有する患者 | 本剤の主な代謝経路は肝臓であり、未変化体の約70%が肝臓で代謝されます。本剤を重度の肝機能障害を有する患者に投与することにより副作用が強くあらわれるおそれがあるため、本剤を投与しないでください。 | |||
5. 好中球数が500/mm3未満の患者 | 本剤投与により好中球減少があらわれることがあります。好中球数が500/mm3未満の患者には本剤を投与しないでください。 | |||
6. リンパ球数が500/mm3未満の患者 | 本剤投与によりリンパ球減少が認められています。また、リンパ球減少と感染症発現に関連がみられることから、リンパ球数が500/mm3未満の患者には本剤を投与しないでください。 | |||
7. ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者 | 本剤の作用機序から、ヘモグロビン減少のリスクを有すると考えられます。ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者には本剤を投与しないでください。 | |||
8. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性 | 動物実験で催奇形性が報告されているため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないでください。 なお、妊娠する可能性のある女性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は、妊娠を避けるよう指導してください。 |
特定の背景を有する患者に関する注意 | 解説 | |||
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(1)感染症(重篤な感染症(敗血症等)又は活動性結核を除く)の患者又は感染症が疑われる患者 | 本剤は免疫応答を減弱する作用を有し、正常な免疫応答に影響を与える可能性があります。 本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や増悪に注意してください。本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、速やかに適切な処置を行い、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止してください。また、患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導してください。本剤投与時に発現する重篤な感染症は、本剤単独投与時と比較して抗リウマチ薬(メトトレキサートを含むDMARD)併用投与時では発現率が高い傾向が認められているため、特に注意してください。 |
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(2)結核の既感染者 (特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)及び結核感染が疑われる患者 |
本剤の投与により、播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、脳髄膜、胸膜、リンパ節等)を含む結核が報告されています。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認してください。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核の診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤の投与開始前に適切な抗結核薬を投与してください。 ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されています。 |
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(3)易感染性の状態にある患者 | 本剤は免疫応答を減弱する作用を有し、正常な免疫応答に影響を与える可能性があります。 本剤投与により、日和見感染症を含む感染症を発現するリスクが増加する可能性があります。 本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や増悪に注意してください。本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、速やかに適切な処置を行い、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止してください。また、患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導してください。本剤投与時に発現する重篤な感染症は、本剤単独投与時と比較して抗リウマチ薬(メトトレキサートを含むDMARD)併用投与時では発現率が高い傾向が認められているため、特に注意してください。 |
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(4)腸管憩室のある患者 | 本剤の投与により、消化管穿孔があらわれることがあります。腸管憩室を有する患者では、本剤投与により憩室炎が悪化し、穿孔に至る可能性があるため、十分注意してください。 | |||
(5)好中球減少(好中球数500/mm3未満を除く)、リンパ球減少(リンパ球数500/mm3 未満を除く)、ヘモグロビン値減少(ヘモグロビン値8g/dL 未満を除く)のある患者 | 本剤の投与により、好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン値減少が更に悪化するおそれがあるため、本剤投与前及び投与中は定期的に検査を実施してください。 | |||
(6)間質性肺炎の既往歴のある患者 | 本剤の投与により、間質性肺炎が増悪又は再発することがあります。本剤投与中は、発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部レントゲン検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスチス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行ってください。なお、間質性肺炎の既往歴のある患者には、定期的に問診を行うなど、十分に注意してください。 | |||
(7)B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性) | 抗リウマチ生物学的製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認してください。 B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。 なお、本剤投与時には、日本リウマチ学会による「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」及び日本肝臓学会による「B型肝炎治療ガイドライン」を参考にするとともに、肝臓専門医等に相談のうえ、適切な処置を行ってください。 |
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(8)心血管系事象のリスク因子を有する患者 | 他の治療法を考慮してください。本剤を投与する場合は、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症の徴候及び症状の発現について十分に観察してください。 | |||
(9)腎機能障害患者 | 本剤を、腎機能障害を有する患者に投与することにより、副作用が強くあらわれるおそれがあります。 【関節リウマチ】 中等度又は重度の腎機能障害を有する患者に対しては、5mgを1日1回の投与とし、十分に注意してください。 【潰瘍性大腸炎】 中等度又は重度の腎機能障害を有する患者に対しては減量し(1回投与量を減量。1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす。)、本剤を慎重に投与してください。 |
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(10)肝機能障害患者 | 本剤の主な代謝経路は肝臓であり、未変化体の約70%が肝臓で代謝されます。 本剤を肝機能障害を有する患者に投与することにより、副作用が強くあらわれるおそれがあります。 【関節リウマチ】 中等度の肝機能障害を有する患者に対しては、5mgを1日1回の投与とし、十分に注意してください。 【潰瘍性大腸炎】 中等度の肝機能障害を有する患者に対しては減量し(1回投与量を減量。1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす。)、本剤を慎重に投与してください。 |
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(11)生殖能を有する者 | 妊娠する可能性のある女性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は、妊娠を避けるよう指導してください。 | |||
(12)妊婦 | 動物実験で催奇形性が報告されているため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないでください。 | |||
(13)授乳婦 | 本剤投与中は授乳を中止してください。ラットで乳汁中へ移行することが報告されています。 | |||
(14)小児等 | 小児等に対する使用経験がないため、安全性は確立していません。 | |||
(15)高齢者 | 高齢者において重篤な感染症の発現頻度の上昇が認められていますので、感染症には十分に注意してください。 一般に高齢者では生理機能(免疫機能等)が低下しているので、十分に注意し、減量も考慮してください。 |
悪性腫瘍の既往のある患者 | 本剤の投与中に、悪性腫瘍の発現が報告されています。 臨床試験の対象から除外されていたため、悪性腫瘍の既往を有する患者に対する本剤の安全性は確認されていません。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ、本剤の投与を考慮してください。 |
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ヘルペスウイルスの既感染者 | 本剤投与によりヘルペスウイルス等の再活性化(帯状疱疹等)が報告されています。また、本剤の臨床試験において日本人患者で認められた重篤な日和見感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと、播種性帯状疱疹も認められていることから、ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。 徴候や症状の発現が認められた場合は、すぐに受診するよう患者に指導し、速やかに適切な処置を行ってください。 |
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生ワクチン接種予定患者 | 本剤投与中のワクチン接種の影響又は、生ワクチン接種による二次感染については明らかではありませんが、感染症発現のリスクを否定できないため、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないでください。必要な予防接種は、本剤投与開始前の接種を考慮してください。 |
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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