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~海外市販後安全性臨床試験と米国のReal World Evidence~
「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等については、製品情報(電子添文等)をご参照ください。
RA患者を対象として海外市販後安全性臨床試験(ORAL Surveillance試験)および、Real World Evidenceである米国(US)Corrona RA Registryの結果について、安全性の注意喚起を目的としてご紹介します。
ORAL Surveillance試験(A3921133試験)海外市販後安全性臨床試験についてご紹介いたします。
関節リウマチ(RA)治療薬の有効性と安全性の検討には、臨床試験および市販後の実臨床におけるエビデンスの蓄積が極めて重要となります。
RA治療薬のゼルヤンツ(トファシチニブ)においても、「臨床試験」と「実臨床」の両方のエビデンスが蓄積され、検討されています。
しかしながら、臨床試験(RCTs)と実臨床(RWE)では患者集団、特定の共存疾患、治療歴など、様々な相違があることから、ORAL Surveillance試験(A3921133)などのRCTsの結果は、実臨床解析から得られた結果と直接比較することはできません。
ORAL Surveillance試験(A3921133試験)は、関節リウマチ(RA)患者を対象としたゼルヤンツ(トファシチニブ)とTNF阻害剤を比較した海外市販後安全性臨床試験です。
ー2014年3月に試験が開始され、2020年7月に完了しました。
ー主要評価項目は、主要な心血管系事象(MACE)と悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌[NMSC]を除く)でした。
ー患者はスクリーニング時に50歳以上で少なくとも1つ以上の心血管系(CV)リスク因子を有することが条件でした。
欧州医薬品庁(EMA)は2021年7月5日に医薬安全性監視リスク評価委員会(PRAC)の勧告を発表し、トファシチニブは65歳以上の患者、喫煙または喫煙歴のある患者、それ(65歳以上、喫煙または喫煙歴)以外のCVリスク因子を有する患者および悪性腫瘍のリスク因子を有する患者に対し、トファシチニブは適切な代替治療がない場合にのみ使用すべきであると勧告しました。その後、ヒト用医薬品委員会(CHMP)はPRACの勧告を支持しました。
ORAL Surveillance試験は主要評価項目に関連するシグナル手順に則して添付文書を更新しました。
ファイザー社は2021年8月20日にPRAC勧告に沿った改訂版の製品概要(SmPC)を実施し、最終報告書の提出に伴う更新を2021年10月20日に行いました。
ファイザー社はORAL Surveillance試験の全結果の継続的なレビューに基づき、各国におけるトファシチニブの添付文書の更新を2022年半ばまでに、EMAおよびその他の規制官庁と協力し進めています。
現時点においてファイザー社はトファシチニブの添付文書に対するすべての更新内容について推測することはできません。
本邦においても2021年10月12日発出の厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知に基づき、本剤の添付文書を改訂しました(改訂内容は添付文書、お知らせ文書を参照)。2021年6月11日のPRACの勧告に関して、RAの申請時臨床試験、A3921133試験および国内でRA患者を対象に実施した全例調査(データカット:2020年11月5日)の比較検討結果を踏まえ、本剤の安全性プロファイルについて検討し、今後の安全確保措置に関して、現時点でのファイザージャパンの見解をまとめたものについては「ゼルヤンツ適正使用のお願い」をご確認ください。
ORAL Surveillance試験は、心血管系(CV)事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上のメトトレキサート(MTX)で効果不十分な中等症から重症の活動性関節リウマチ(RA)患者4,362例を対象に、トファシチニブ(5mg1日2回または10mg1日2回)およびTNF阻害剤の投与後の安全性を検討する非盲検無作為化並行群間比較試験です。
主要評価項目は、主要な心血管系有害事象(MACE)および悪性腫瘍([NMSC]を除く)の発現率(IR)です。
非劣性基準は、TNF阻害薬群に対するトファシチニブ併合群(トファシチニブ 5mg1日2回群およびトファシチニブ 10mg1日2回群)のハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)上限を1.8未満と定義しました。
ORAL Surveillance試験におけるベースライン時の患者背景および特性はこのようになっています。
主要評価項目である判定されたMACEの発現率は、TNF阻害剤群2.5%(37/1,451例)に対しトファシチニブ併合群3.4%(98/2,911例)でした[HR 1.33(95% CI:0.91-1.94)](追跡期間中央値4.0年)。
TNF阻害剤に対するトファシチニブ併合群はHRの両側95% CI上限が1.8を超えたため非劣性は満たされませんでした(95% CI上限:1.94 > 非劣性基準:1.8)。
観察期間は治療開始から最終投与の60日後までとしました。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
主要評価項目である判定された悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現率は、TNF阻害剤群2.9%(42/1,451例)に対しトファシチニブ併合群4.2%(122/2,911例)でした[HR 1.48(95% CI:1.04-2.09)](追跡期間中央値4.0年)。
TNF阻害剤に対するトファシチニブ併合群はHRの両側95% CI上限が1.8を超えたため非劣性は満たされませんでした(95% CI上限:2.09 > 非劣性基準:1.8)。
観察期間は投与の有無にかかわらず、すべての追跡期間を含んでいます。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定されたMACEにおける年齢別の主要評価項目のサブグループ解析の発現率は、65歳以上では、TNF阻害剤群0.91(95% CI:0.50-1.52)に対しトファシチニブ併合群1.63(95% CI:1.20-2.18)でした[HR 1.79(95% CI:0.99-3.26)]。65歳未満では、TNF阻害剤群0.66(95% CI:0.42-0.99)に対しトファシチニブ併合群0.72(95% CI:0.54-0.94)でした[HR 1.10(95% CI:0.67-1.79)]。
観察期間は治療開始から最終投与の60日後までとしました。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定されたMACEにおける地域別の主要評価項目のサブグループ解析の発現率は、北米では、TNF阻害剤群0.92(95% CI:0.49-1.57)に対しトファシチニブ併合群1.27(95% CI:0.88-1.77)でした[HR 1.38(95% CI:0.73-2.62)]。北米以外の国では、TNF阻害剤群0.66(95% CI:0.42-0.98)に対しトファシチニブ併合群0.87(95% CI:0.67-1.11)でした[HR 1.32(95% CI:0.82-2.11)]。
観察期間は治療開始から最終投与の60日後までとしました。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定されたMACEにおける心筋梗塞の主要評価項目のサブグループ解析の発現率は、TNF阻害剤に対しトファシチニブによる治療を受けた患者において、非致死性の心筋梗塞の増加が観察されました。(XEL51L015A ゼルヤンツ EMA DHPCレター(参照和訳)の記載より)
観察期間は治療開始から最終投与の60日後までとしました。
発現予測因子は変数減少法(後退的選択法)の多変量Cox比例ハザードモデルを用いました(年齢65歳以上、男性、喫煙または喫煙歴、糖尿病の既往、冠動脈疾患の既往[心筋梗塞、冠動脈疾患、安定狭心症、冠動脈の治療を含む])。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定された悪性腫瘍(NMSCを除く)における年齢別の主要評価項目のサブグループ解析の発現率は、65歳以上では、TNF阻害剤群1.05(95% CI:0.62-1.67)に対しトファシチニブ併合群1.79(95% CI:1.35-2.33)でした[HR 1.70(95% CI:1.00-2.90)]。65歳未満では、TNF阻害剤群0.64(95% CI:0.41-0.95)に対しトファシチニブ併合群0.87(95% CI:0.67-1.10)でした[HR 1.36(95% CI:0.85-2.17)]。
観察期間は投与の有無にかかわらず、すべての追跡期間を含んでいます。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定された悪性腫瘍(NMSCを除く)における地域別の主要評価項目のサブグループ解析の発現率は、北米では、TNF阻害剤群0.99(95% CI:0.57-1.62)に対しトファシチニブ併合群1.91(95% CI:1.44-2.48)でした[HR 1.92(95% CI:1.10-3.34)]。北米以外の国では、TNF阻害剤群0.67(95% CI:0.44-0.98)に対しトファシチニブ併合群0.84(95% CI:0.65-1.07)でした[HR 1.25(95% CI:0.79-1.97)]。
観察期間は投与の有無にかかわらず、すべての追跡期間を含んでいます。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
判定された悪性腫瘍(NMSCを除く)における肺癌およびリンパ腫の副次評価項目の発現率は、TNF阻害剤に対しトファシチニブによる治療を受けた患者において、肺癌とリンパ腫の増加が観察されました。(XEL51L015A ゼルヤンツ EMA DHPCレター(参照和訳)の記載より)
観察期間は投与の有無にかかわらず、すべての追跡期間を含んでいます。
発現予測因子は変数減少法(後退的選択法)の多変量Cox比例ハザードモデルを用いて特定しました(年齢65歳以上、喫煙または喫煙歴)。
トファシチニブ 10mg1日2回投与群は、2019年2月の試験デザイン変更により5mg1日2回投与に切り替えられた被験者が含まれます。
副次評価項目である安全性の有害事象はこのようになっています。
副次評価項目である安全性の特に注目すべき有害事象の発現率およびハザード比はこのようになっています。
副次評価項目である有効性のSDAIスコアのベースラインからの変化量は、治療群間で同程度であり、最初の評価時点である投与2ヵ月時から低下が認められ、試験終了まで持続しました。
副次評価項目である有効性のHAQ-DIスコアのベースラインからの変化量は、治療群間で同程度であり、最初の評価時点である投与2ヵ月時から低下が認められ、試験終了まで持続しました。
副次評価項目である有効性のSDAIスコアにおける低疾患活動性達成率は、治療群間で同程度であり、最初の評価時点である投与2ヵ月時から上昇が認められ、試験終了まで持続しました。
副次評価項目である有効性のSDAIスコアにおける寛解達成率は、治療群間で同程度であり、最初の評価時点である投与2ヵ月時から上昇が認められ、試験終了まで持続しました。
実臨床試験につきまして、米国(US)Corrona RA Registryに登録されたトファシチニブによる治療を開始した患者と新規生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARDs)による治療を開始した患者における5年間の有害事象(AE)の発現率(IR)を比較した試験について、ご紹介いたします。
RA治療薬のゼルヤンツ(トファシチニブ)においても、「臨床試験」と「実臨床」の両方のエビデンスが蓄積され、検討されています。
しかしながら、臨床試験(RCTs)と実臨床(RWE)では患者集団、特定の共存疾患、治療歴など、様々な相違があることから、ORAL Surveillance試験(A3921133)などのRCTsの結果は、実臨床解析から得られた結果と直接比較することはできません。
CORRONA Registryは関節リウマチ(RA)患者を対象としたプロスペクティブ、非介入コホート研究です。
対象は2012年11月6日から2018年7月31日までの間にトファシチニブまたはbDMARDによる治療を開始し、US Corrona RA Registryに登録された18歳以上のRA患者です。
トファシチニブまたはbDMARDの投与を開始した患者を6ヵ月ごとに追跡し、2019年1月31日までに発現した有害事象データを収集して、トファシチニブまたはbDMARDの有害事象発現率(初回イベント数/100人・年)を比較しました。
有害事象(AE)の発現率(IR)は、観察期間の定義別に、急性アウトカムと長期アウトカムの2つに分類して解析しました。
急性アウトカムには、主要心血管イベント(MACE)、重篤な感染症イベント(SIEs)、帯状疱疹(HZ)、静脈血栓塞栓症イベント(VTE)を含め、トファシチニブまたは新規bDMARDの投与開始日をindex dateとし(複数のbDMARDが投与開始された場合は個別のindex eventとみなす)、最初のイベント発現、治療中止後90日、他のbDMARDへの切り替え、最終受診時、死亡、データ収集期間終了のいずれか早いほうまでを観察期間としました。
長期アウトカムには、悪性腫瘍および死亡を含め、トファシチニブまたは新規bDMARDの投与開始日をindex dateとし(複数のbDMARDが投与開始された場合は個別のindex eventとみなさない)、イベント発現、追跡不能または試験期間終了までの全期間を観察期間としました。
本研究で対象とした、2012年11月6日から2018年7月31日までの間にトファシチニブまたはbDMARDによる治療を開始し、US Corrona RA Registryに登録された18歳以上のRA患者における患者背景はこのようになっています。
PS-trimmed集団:標準化差(STD)が0.10超の共変量および臨床経験に基づいて選択した共変量を用いて、傾向スコア(PS)データを抽出(共変量欠損例やPSに乖離がある症例を除外)した集団。
傾向スコア(PS)-trimmed集団における有害事象の発現率(100人・年あたりの発現件数)は、主要心血管イベント(MACE)ではトファシチニブ群0.64、bDMARD群0.91、重篤な感染症イベント(SIEs)ではトファシチニブ群3.12、bDMARD群2.83、帯状疱疹(HZ)ではトファシチニブ群1.44、bDMARD群0.65、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌[NMSC]を除く)ではトファシチニブ群0.88、bDMARD群0.81、NMSCではトファシチニブ群1.08、bDMARD群1.10、死亡ではトファシチニブ群0.84、bDMARD群0.86でした。
PS-trimmed集団:標準化差(STD)が0.10超の共変量および臨床経験に基づいて選択した共変量を用いて、傾向スコア(PS)データを抽出(共変量欠損例やPSに乖離がある症例を除外)した集団。
傾向スコア(PS)-trimmed集団における有害事象のハザード比(トファシチニブ群 vs. bDMARD群)は、帯状疱疹(HZ)ではトファシチニブ群で有意に高かったこと[調整済みHR 2.32(95% CI:1.43-3.75)]を除き、コホート間は同程度でした。
PS-trimmed集団:標準化差(STD)が0.10超の共変量および臨床経験に基づいて選択した共変量を用いて、傾向スコア(PS)データを抽出(共変量欠損例やPSに乖離がある症例を除外)した集団。
年齢および性別で標準化した発現率(100人・年あたりの発現件数)は、静脈血栓塞栓症イベント(VTE)ではトファシチニブ群0.29、bDMARD群0.33、深部静脈血栓症(DVT)ではトファシチニブ群0.13、bDMARD群0.17、肺塞栓症(PE)ではトファシチニブ群0.19、bDMARD群0.19でした。
2012年11月6日(米国食品医薬品局によるトファシチニブ承認)から2018年7月31日(2019年1月までフォローアップ)までの期間においてUS Corrona RA Registryに登録されたトファシチニブで治療開始した患者と新規生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARDs)で治療開始した患者における5年間の有害事象発現率を比較した結果、両群で主要心血管イベント(MACE)、重篤な感染症イベント(SIEs)、悪性腫瘍、死亡、静脈血栓塞栓症イベント(VTE)発現率は同程度でしたが、帯状疱疹(HZ)発現率はトファシチニブ群でbDMARD群よりも高いことが示されました(PS-trimmed集団調整済みHR 2.32(95% CI:1.43-3.75)]。
CORRONA Registryには、以下にあげるような限界があります。
・米国以外での一般化には限界がある。
・群間差があることを示唆するエビデンスはないが、患者は重篤でない有害事象(例:非黒色腫皮膚癌[NMSC])について過少報告する可能性がある。
・初めてbDMARDを使用する患者は、有害事象のリスクが高い可能性があり、本研究では有害事象の発現率は過小評価される可能性がある。
・傾向スコア(PS)法は、他の観察登録の場合と同様に、非ランダムな処方パターンを調整するが、測定されていない交絡因子のため、いくつかのチャンネリングバイアスが残存する可能性がある。
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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