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関節リウマチ診療ガイドライン2020について、治療目標、治療原則、薬物治療アルゴリズム、非薬物治療・外科的治療アルゴリズムの内容をご紹介します。
監修:鹿児島赤十字病院 リウマチ科 秋元 正樹 先生
わが国における最初の「関節リウマチ診療ガイドライン」は、1997年に発行されました。その後、2004年、2014年と改訂が行われ、本ガイドラインは6年ぶりの改訂となります。
この間、新たな治療薬の承認・エビデンスの蓄積など、RA診療を取り巻く環境は大きく変化しました。
積極的に寛解を目指すT2Tの概念を日常診療に応用し、多様化した治療選択肢を有効に活用して患者さんの予後を改善させるうえで、本ガイドラインは有用です。
こちらは関節リウマチ診療ガイドライン2020の治療目標と治療原則です。
関節リウマチ(RA)診療は過去20年間で飛躍的に進歩しました。現在の薬物治療はRAの病態を改善することにより臨床症状を改善させ、関節破壊の進行を防止するものであり、RAの病因を標的にした治療法や、発症リスクの高い個体に対する発症予防策はいまだ開発途上にあります。
これらの状況や、2014年版の治療目標およびわが国のリウマチ対策の全体目標をふまえて、本診療ガイドラインにおけるRAの治療目標はこのように定められました。
RA患者の治療を行う際には、本診療ガイドラインで提唱する個々の治療推奨の基盤となる治療原則が必要となります。RAの治療原則は、EULARやACRのリコメンデーションにも記載されており、これらは国・地域を越えて共通の原則と考えられます。したがって、本診療ガイドラインでは、2014年版と同様に、EULARリコメンデーション2019改訂版の治療原則を採用することとしています。
こちらは関節リウマチ診療ガイドライン2020の薬物治療アルゴリズムです。
フェーズⅠでまずMTXの使用を検討し、すべてのフェーズにおいてMTXを基本的な薬剤として考慮すべきとしています。
ただし、わが国のRA患者は高齢者が多く、また海外と比較しリンパ増殖性疾患や間質性肺炎の合併頻度が高いことから、禁忌事項のほかに、年齢、腎機能、肺合併症等を考慮して、MTXの適応の有無と開始量を判断します。
MTXの副作用の予防目的では葉酸の使用が推奨され、MTX使用がむずかしいもしくは不可の場合、MTX以外のcsDMARDを使用します。
また、MTX単剤使用で効果が不十分な場合は、他のcsDMARDを追加して併用療法を検討します。
欧米で使用されていないわが国独自のcsDMARDとして、ブシラミン、イグラチモド、タクロリムスなどがあり、併用で治療効果の増強が期待できるとされています。
フェーズⅡでは、MTX併用・非併用いずれの場合もbDMARDまたはJAK阻害薬の使用を検討しますが、長期安全性、医療経済の観点からbDMARDの使用を優先します。
MTX非併用の場合はbDMARDではnon-TNF阻害薬をTNF阻害薬より優先しますが、この場合のnon-TNF阻害薬はIL-6阻害薬を意味します。
また、MTX非併用の場合、bDMARDまたはJAK阻害薬の単剤療法も考慮できます。
フェーズⅢでは他のbDMARDまたはJAK阻害薬への変更を検討します。
この場合、TNF阻害薬が効果不十分な場合は非TNF阻害薬への切り替えを優先しますが、その他の薬剤については、どの薬剤への変更が適切であるかの推奨は作成しておらず、future questionとして次のガイドラインでアップデート予定とされています。
こちらは関節リウマチ診療ガイドライン2020の非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムです。
非薬物治療・外科的治療アルゴリズムは、おそらく世界初の試みとして、薬物治療のアルゴリズムと同様に、リウマチ専門医と患者代表が作成した推奨から作成されました。
非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムは、薬物治療アルゴリズムに付随するものとして存在するとされています。
すなわちあらゆるRA患者において、薬物治療を必要かつ十分に行うことは、身体機能の維持・改善を含めた、すべての治療目標達成のための原則です。
したがって、薬物治療アルゴリズムに則って治療を行い、それでもなおかつ四肢関節症状および機能障害が残存する場合に、非薬物治療・外科的治療を検討し、このアルゴリズムのフェーズⅠに入ります。
フェーズⅠでまず重要なのは、慎重な身体機能評価です。
画像診断による関節破壊の評価は必須であり、1つ1つの関節の機能評価およびいくつかの関節にまたがる複合的な機能評価も行う必要があります。
画像診断として単純X線撮影に加え、関節超音波検査、MRI検査、CT検査を適宜行います。
そのうえで、包括的な保存的治療を決定し実行します。保存的治療には、装具療法、生活指導を含むリハビリテーション治療、短期的なステロイドなどの関節内注射が含まれます。
もしこれらの治療が有効であればそれらを継続し、適切な薬物治療を併用して機能的寛解の達成・維持を目指します。
保存的治療を十分に行っても無効ないし不十分な場合には、フェーズⅡに進みます。
特に機能障害や変形が重度である場合、または薬物治療抵抗性の少数の関節炎が残存する場合は、関節機能再建手術を検討します。
しかし手術によっても十分な改善が得られないと予想される場合、または不利益が利益を上回ると判断される場合は手術不適応とします。
これらの問題がないと判断した場合であっても、十分な説明にもかかわらず患者が手術を選択しない場合、また周術期および術後に患者に対する十分なサポート体制が得られないと判断した場合には、手術不適応となります。そのような場合は再び可能な限りの保存的治療を検討します。
本コンテンツは、日本国内の医療・医薬関係者を対象に、日本国内で医療用医薬品を適正にご使用いただくため、日本国内の承認に基づき作成されています。日本の医療機関・医療提供施設等に所属し、医療行為に携っている方を対象としており、日本国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
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